第102回貴重書展                     
学校法人総持学園創立80周年記念
画家の見た抜歯風俗
                                
       
期間 平成16年5月12日(水)〜5月27日(木)
会場 鶴見大学図書館1階エントランスホール展示コーナー
 
鶴見大学図書館 主催
(第105回 日本医史学会記念)
      
 
 
 
 
<ご紹介>

画家の見た抜歯風俗

 抜歯が一つの画題として絵画に登場するのは、中世における殉教者聖アポロニアの肖像画が15世紀頃から描かれ始め、またその頃から描かれてきた「歯抜き人」の絵が現存している。
 また16世紀になって、木版画や銅版画(エッチング)の技法が発明され、19世紀になると更に便利な石版画(リトグラフ)が考按され、それとともに諷刺画が流行するようになり、更に新聞雑誌などマスコミが社会に滲透すると共に、これらのメディアを通じて20世紀初頭まで抜歯を諷刺した絵画が流行した。

 当時の歯科事情について言えば、歯科医師といえるものは18世紀ごろからヨーロッパに現れるが、当時パリでさえその数は数人から数十人に過ぎなかったと言われ、20世紀になっても歯科医療は庶民の需要を満たすに足りず、そこに所謂「歯抜き人」と呼ばれる人達を必要とした社会的意義が存在した。

 「歯抜き人」は大道で香具師まがいの口上を述べ、人を集めて歯を抜くことを業とした人々であるが、彼等は20世紀初頭まで存在し、その様子は画家たちによって、尊大な「歯抜き人」と哀れな患者という図式で、皮肉やペーソスを込め誇張して描かれている。

 本学図書館に集められたこれらの図は、正規の歯科医師がまだいなくて、麻酔や消毒法の殆ど無い時代における民間人の抜歯を描いた、16世紀から20世紀にわたる油彩画・版画・グラビア・画集であり、各時代における代表的画家達の優れた作品が集められ、世界でも例を見ない特異なコレクシヨンである。

                        歯学部非常勤講師  戸出一郎
 


 

                        
 

<解題>

1 聖アポロニア像 (Saint Apollonia)
  作者不詳                                  
  イタリア 複製(原画:1470年)油彩画(グラビア) 22.8×15.8cm 
  ワシントン国立美術館所蔵                        
 ローマ皇帝デキウス(Decius、201-251)は、在世中、国家宗教の復興を図りローマの神々への祭儀を命じたが、キリスト教徒が彼の命令に従わなかったため大規模な弾圧を行った。アポロニアは当時アレキサンドリアに住むキリスト教徒の老女であったが、改宗に応じなかったため歯を抜くという拷問を受けた後、自ら刑場の火の中に身を投じたといわれる。彼女は249年にローマ教会によって聖列に加えられた。アポロニアは、中世・ルネッサンスを通して通常うら若い女性として描かれ、殉教の印である棕櫚の枝と、歯を挟んだ鉗子を手にした姿で登場する。南仏には彼女を祀る社があり、毎年、忌日の2月9日には近隣の歯科医達が参列してミサが行われる。このようなことからアポロニアは歯科医並びに歯痛に悩む人々の守護聖人とされ、その殉教を題材とした絵画や彫像が数多く残されている。
 この絵はピエロ・デラ・フランチェスカ(Piero della Francesca. 1415-1492)の弟子の一人が描いたと思われるものである。

2 歯抜き人 (Der Zahnarzt)
  ライデン(Lucas van Leyden,1494-1533)作
  1523年 銅版画 11.5×7.5cm
 ライデンは16世紀のフランドル美術を代表する偉大な画家である。1523年に製作されたこの銅版画は、放浪歯抜き人の仕事中の絵としては現存するものの中で最も古い作品といわれている。
 後ろに旗を立て、机の上に道具を並べて、着飾った歯抜き人がボロをまとった患者の歯を抜こうとしており、後ろには介補らしい女性がいて患者の嚢中から金を抜き取ろうとしている。

3 歯抜き人 (Der Zahnbrecher)
  ホントホルスト(Gerrit van Honthorst,1590-1656)作
  1780年頃模写(原画:1622年)油彩画(画布) 49.8×56.6cm
 この絵は1622年にホントホルストによって描かれた原画の模写である。
 術者は患者の後ろに立ってペリカンのようなもので下顎前歯の抜歯を行っている。傍にいる一人は患者の腕をつかみ、助手がロウソクを持って口を照らしている。手術器具はきちんと壁に掛けられて、術者が放浪歯抜き人ではないことを思わせる。
 この絵のようにホントホルストはランプやロウソクの焔に照らし出された夜の光景を好んで描いた。

4 歯抜き人(L’arracheur de dents)
  ダウ(Gerard Dou,1613-1675) 作
  パリ 1842年頃(原画:17世紀) 銅版画 31.3×26.2cm
 ダウは17世紀オランダの画家で「精密」派の先駆者として知られている。
 レンブラントの門下でもあった彼は、村の日常生活を好んで描いた。
 この作品は歯科医が歯鍵で抜歯を行っており、患者は両手を握り締め、足を踏ん張って痛みに耐えているところである。この歯科医はいわゆる放浪歯抜き人ではなく、知識人であることが本棚においてある本、バイオリンや頭蓋骨などからうかがえる。

5 ホガースのサテュロス:道徳と滑稽に関する作品集
     (Les Satyres de Guillame Hogarth:oeuvre moral et comique en LXIX subjets)
  ホガース(William Hogarth,1697-1764)著
  ロンドン 1768年刊 80図 48cm 銅版画 32.2×24.0cm 「夜(night)」収載
 ホガースは18世紀におけるイギリスの画家で、版画家として一家をなした人である。
彼は当時ロンドン社交界の貴族趣味や俗物性に強い嫌悪の感情を持ち、一生の間にあらゆる階級に対する風刺画を連作した。しかし彼自身は心の底にきびしい倫理観と庶民に対する愛情を抱いていた。
本書はこのような彼の人柄をよく表した版画集である。1日の移り変わりを描いた4枚の連作版画中の「夜」の部。ロンドンのチャリングクロス通りの夜景。ひげを剃っている理髪師の姿が窓ごしに見え、窓の上には抜歯の看板がかかっている。それには、「ひげ剃り、瀉血、抜歯は即座に」とあり、彼がBarber surgeon(理髪外科医)であることが分る。   

6 歯抜き人 (The toothdrawer)
  コリエー(John Collier, 1708-1786, pseud. Timothy Bobbin)作か
  イギリス 18世紀 油彩画(木版)28.9×35.0cm
 コリエーは詩画の才能に恵まれ、初めはまじめな宗教画や風景画や人物画を描いていたが、途中から大転換をして風刺画を描くようになり、世間の芸術的評価に背を向ける人となった。
 この絵はかつらをかぶり着飾った歯科医が患者の上顎前歯に糸をかけて引き抜こうとするが、患者は痛みに耐えかねて手で糸をつかみ前へのめる。そこで一人の女性が後ろから患者の髪をつかんで頭を引っ張り支えている。1810年刊行の銅版画には助手の女性が描かれていない。この絵はコリエーの原画か、あるいはそれに近い模写であろう。

7 ユーモラスに描写された情熱 (The passions, humourously delinated)
  コリエー (John Collier,1708-1786,pseud.Timothy Bobbin)著
  ロンドン 1810年刊 25図 27cm 彩色銅版図
  「鋭い痛み(Acute)」 「笑いと実験(Laughter & experiment)」 「同情(Fellow feeling)」
  「歓楽と苦悩(Mirth[&]angiush)」収載
 著者のジョン・コリエーは詩画の才能に恵まれ、初期には高尚な風景や肖像や宗教画を多く描いたが、中途からこうしたきまじめなものから風刺的なものへと大きく転換した。その後の彼はたくさんの道化や醜い老婆などのグロテスクな姿を描き、芸術的評価に対して背を向ける者となった。本書の初版は1772?3年で、その標題は“The Human Passions delineated, in above 120 figures,droll, satirical and humorous”(おどけ、風刺、ユーモアに満ちた人間の情熱120図)というものであった。
 第2版(本書)は初版から一部を抜粋して複製したものと思われる。各版画の内容は、農夫、僧侶、法律家、政治家などの日常における仮面をはぎ、人間の心に巣くう醜さを鋭い風刺をもって表現している。ここに挙げた「笑いと実験」はその一部で、歯科医による抜歯のありさまが嘲笑をこめて描かれている。人間の内面にあるものに対するあくなき追求が、抜歯という行為を通じてこのような表現になったのであろう。

8 田舎の歯抜き人 (The Country Tooth Drawer)
   ダイトン(Robert Dighton ,1752?-1814)作
  ロンドン 1784年 銅版画 44.5×53.5 cm
 ダイトンは肖像画家・風刺家・エッチング画家として知られ、自らを”drawing-master”と呼んだ。彼の彫塑は手彩を加えた銅版画が多く、バーの人々や軍隊の仕官や俳優・女優等の諷刺肖像画を得意とした。

9 歯の移植 (The transplanting of teeth)
  ローランドソン ( Thomas Rowlandson, 1757-1827) 作
  ロンドン 1790年(原画:1787年) 彩色銅版画 28.9×43.2cm
 ローランドソンはイギリスの風刺画家。この絵は当時行われていた歯の移植を描いている。貧しい患者はわずかなお金のために健全な歯を抜かれ、裕福な患者に移植される。右側の貴婦人は歯を移植されているところで、左側の貴婦人は貧乏人の抜歯が終わるのをいらいらしながら待っている。また後ろの方では今入れてもらった歯を鏡で見ている様子が描かれている。

10 鍛冶屋の歯抜き (Der Arzt im North-Fall)
   フリードリッヒ (Johan Georg Friedrich,1742-1809)作
   デンマーク 複製 (原画:1800年頃) 彩色銅版画(グラビア)23.8×19.1cm
 ドイツ生まれの画家フリードリッヒはデンマークで博物図などを描いていた。これは彼の死後銅版画にされた鍛冶屋による抜歯の図である。大きな火鋏を用いて歯を抜いている。右の女性は患者の妻で、足もとの鶏は抜歯の謝礼であろうか。

11 歯抜き人 (L’arracheur de dents)
   デュプレッシ=ベルトー (Jean Duplessi-Bertaux, 1747-1819)作
   パリ 1810年頃 彩色銅版画 5.7×8.3cm
当時の床屋、靴屋、帽子屋などと一緒に描かれた商売くらべ的風俗集からの1枚である。歯抜き人は、広場の一隅にしつらえた治療台の上で厳かに(?)抜歯を行うのである。もちろん患者は痛さに耐えかねてわめいている。しかし悲鳴はリュートやラッパの音に打ち消され、見物人には聞こえようもない。

12 歯科医 人は歯科医を通じて謹厳実直に学問をした人間を認め得る
   (Le dentiste voila ou l’on reconnait l’homme adroit l’homme qui a etudie)
   ラフェ (Denis August Marie Raffet, 1804-1860) 作
   パリ 1825年 彩色リトグラフ 24.4×24.3cm
 ラップをぶら下げた歯科医が右手で患者の頭を押さえ、左手でサーベルを振り上げ、今から抜歯を始めるぞとアピールしている。後方では助手が鍬のような大きな器具を持ち、テーブルの上にはピストルが置いてあったりとやたらに客寄せの道具が目につく。この時代では大道芸で抜歯することは珍しくなかったようである。

13 歯抜き人 最初の一人をどうやって見つけたか?
    (L’arracheur-pour la premiere comment la trouvez-vous!)
   ラフェ (Denis August Marie Raffet, 1804-1860)作
   パリ 19世紀前期 彩色リトグラフ 22.2×19.8cm
   『ラ・カリカチュール(La Caricature, Pl.104)』別丁挿図104
 頬を腫らした貴族の歯を抜いた歯抜き人が、それを高々と掲げて見栄をきっている。デラポルトによってラフェの原画が石版画にされ、カリカチュール紙(52,104図)に載せられたものである。
 鉗子に結ばれた紙切れには” H?r?dit?”(世襲)と記されていて、これは王制時代の貴族を痛烈に揶揄した風刺画である。

14 歯抜き人の手柄 (Les exploits d’un dentiste)
   マロン(Ferdinand Maroehn 又はMaronnio)
   パリ 1847年頃 彩色リトグラフ 66.0×56.5 cm
 Ferdinand Maroehn 一名 Maronnio は19世紀半ばのフランスの画家で、1846年から1859年の間、パリのサロンに出品していた。彼は主として風俗画、風景画、水彩画をよく画いた。

15 冷たい鉄 (Le baume d’acier)
   ボワイイ (Louis Leopold Boilly, 1761-1845) 作 
   パリ 19世紀中期再版(初版:1825年頃) 彩色リトグラフ 27.7×23.3cm
 『しかめっ面画集(Les grimaces, ca.1823-1828)所収
上掲のリトグラフ集に収められた全96枚中の1枚で、1823年に出された。ボワイイはフランスの風刺画家としては先駆的な人で、写実の中にも滑稽味のある風刺精神を表し、その作品は独特の雰囲気をかもし出している。絵はペリカン(抜歯器具)を用いて上顎前歯を抜いているところである。患者の苦痛に歪んだ表情はリアルでグロテスクである。

16 ドクター・アイゼンバルトと患者 (Dr. Eisenbart und sein Patient)
   シュナイダー (J.Schneider) 作
   ドイツ 1826年 彩色リトグラフ 2葉 36.8×21.9cm
17世紀のにせ医者アイゼンバルト(1661-1727)は風刺画や俗謡の主人公として有名である。着飾ったアイゼンバルト先生はポケットに注射器や不気味な薬びんを押し込み、大きな鉗子で抜いた歯をかかげている。一方の患者は腫れ上がった頬に湿布をして、痛みと恐怖に耐えている。はたしてこの患者の運命は?

17 ローマ村の歯抜き人 (Der Zahnbrecher in einem Roemischen Staedtchen )
   リヒター(Adrian Ludwig Richter、1803-1884)作、30.0×42.1cm、
   後にLindauにより彫刻プリントされたもの。
   ドレスデン 1839年 版画 20.3×31.2cm
 A.L.Richterは、ドイツ後期ロマン派の代表的画家として名高く、2千にも上るデザイン画、版画を描き、大衆芸術家として有名である。1855年ミュンヘン アカデミーの名誉会員に推され、59年にはライプチッヒの文学部名誉博士に、64年にはザクセンのアルブレヒト修道会の騎士十字勲章を受け、68年にはオーストリアのフランツ・ヨゼフ協会員の称号を得た。
 この絵は19世紀ローマの村を訪れた巡回歯科医(または歯抜き人と呼ぶべきか)を思わせる図で、シルクハットをかぶって馬に乗り、従者を従えて患者を見下ろしている。周りの風景や動物はドイツのものである。

18 歯科医ロベール・マケール (Robert Macaire dentiste)
   ドーミエ(Hoore Daumier,1808-1879) 作
   パリ1837年 彩色リトグラフ 23.2×21.6cm
   「ル・シャリヴァリ紙(Le Charivari)」1837年7月9日掲載 「風刺(Caricaturana) No.57」
ドーミエは19世紀フランスの著名な風刺画家である。当時パリで人気のあったメロドラマの主人公で詐欺師ロベール・マケールの名を借りて、歯抜き人のでたらめな行為を嘲るとともに、その治療を受けた名士を揶揄もしている。下欄の説明文に“これはマケール先生!あなたは良い歯を2本も抜き、悪い歯を2本残されましたね”(ロベール・マケール独白)“しまった!”(大声で)“お疑いなさいますな!それには理由がございます。悪い歯は何時でも抜けますが、良い歯というものは終には虫歯になったり病んだりいたします。入れ歯ならば絶対に病むこともなく具合の良いもので、これ以上のものはありません”

19 なんて頑固な歯だ! (She holds firm!)
   ドーミエ(Honore Daumier, 1808-1879)作
   パリ 1839年 彩色リトグラフ(グラビア) 33.0×25.4cm
   「ル・シャリヴァリ紙(Le Charivari)」1839年8月10日掲載「グロテスク光景集Sc?nes grotesques」No.4」
 18番と同じドーミエの作品である。床にはもう5本の歯と歯鍵が投げ出されている。顔を歪ませている患者を尻目に顔色一つ変えず「なんて頑固な歯だ!」と、患者の口に手を突っ込んで抜こうとしている。何と、冷酷な女性歯科医であろうか。


20 歯痛 (The tooth-ache)
   メイヒュウ (Horace Mayhew, 1816-1872)著 クルックシャンク(George Cruikshank, 1792-1878)画
   ロンドン 1849年頃刊 パノラマ本 43図 13.0cm 彩色銅版画
 クルックシャンクは19世紀イギリスで風刺画家・挿絵画家・社会改革者として活躍した。時局雑誌や児童書の挿絵を数多く描き、サカレーやディッケンズの著作の挿絵画家としても有名である。作文者のメイヒュウは、当時兄ヘンリー、弟オーガスタと共に活躍した文筆家で、風刺誌“パンチ”にしばしば投稿している。
 本書は当時の絵本に見られる珍しいパノラマブックで、激しい歯痛に悩む患者が抜歯されて治癒するまでの経過をユーモラスに描いたものである。

21 むし歯 (Der hohle Zahn)
   ブッシュ (Wilhelm Busch, 1832-1908)作
   ミュンヘン 38版 1900年頃(初版:1860年) 彩色木版画 44.4×35.2cm
   「ミュンヘン一枚絵(M?nchener Bilderbogen) No.330」
 ブッシュはドイツの詩人、漫画家として有名で、この絵は1860年の漫画新聞「ミュンヘン一枚絵」に載せられたものである。貧しい農夫クラッケが激しい歯痛に苦しみ、煙草を吸ったり、酒を飲んだり、あげくに妻を叩いてみるが痛みは止まらない。ついに意を決して医者を訪れる。医者は長いガウンをまとい、長いパイプを口にして気取りながら手にした歯鍵で強引に歯を抜き謝礼を受け取る。お蔭でクラッケは食事が出来た。

22 外科医―ラ・ランタン・マジック16 (La chirurgie-La lanterne magique, No.16)
   シャン(C.H.de Cham, 1819-1879)作
   パリ 1850年頃 彩色リトグラフ 22.6×30.9cm
 シャンはフランスの漫画家であり、石版画によって日常の面白く活気あふれる場面を描写した。
 ここで注目されるのは外科と題して抜歯風景を描いていることである。

23 歯科技術者(女医) (Die Zahnkunstler)
   作者不詳 (Anonymous)
   ドイツ 1883年頃 木版画 11.8×8.1cm
 たくましい女性歯科医が、恐怖と苦痛に戦く患者の頭を押さえ付けて、強引に抜歯しようとしている。
 女性の術者をテーマにした木版画である。

24 僧院橋の歯抜き人 (M.Benevant qui arrache si bien les dents, a la foire de Pont-l’abbe)
   ロシェール (Charles Rocher)作
   パリ 1930年頃(原画:1925年)リトグラフ 34.8×27.4cm
 セーヌ川にかかる僧院橋のほとりに市が立った。歯抜き人のベネヴァン氏は楽隊を乗せた馬車の上に立ち、頬の腫れた患者の傍らで薬瓶を高く掲げ、左右には解剖図を拡げて口上をのべている。チョッキには歯牙を連ねた飾りを付け、これから抜歯をするのであろう、机の上には鉗子があり、傍らに唾壺がある。術者の胸元につけた勲章ときらめく指輪、皿の中のコインが如何にも大道歯抜き人らしい雰囲気を出している。周囲をとりまく人々の表情と衣装が面白い。