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第113回貴重書展 『豊穣な辞書の世界〜木原研三先生旧蔵古辞書コレクション〜』


期間 2006年12月11日(月)〜12月15日(金)
鶴見大学図書館


豊 穣 な 辞 書 の 世 界
〜木原研三先生旧蔵古辞書コレクション〜

                                                文学部教授・副学長 本吉 侃

 今回の展示は、すべて『英語学人名辞典』の編集者、『コンサイス英和辞典』編集主幹として知られるお茶の水大学名誉教授木原研三先生が長年にわたって収集されてきた辞書です。愛書家の先生はそれぞれを購入されたときを鮮明に記憶されておられます。縁があり鶴見大学にご寄贈なされました。断腸の思いで手放された一冊一冊を、大切に保存、活用することが先生に対する最大の感謝と言えましょう。全国の辞書研究家にも利用しやすいように最大の配慮をしたいと考えております。
 今回ご寄贈いただいたもので、内容的に最古のものは1440年頃に書かれた英羅辞典(英語の見出し語に相当する意味をラテン語で説明した対訳辞典)です。イギリスでは、作品の注釈(グロッサリー)から羅英辞典が生まれ、そのあとで英羅辞典が生まれました。その最初ものが、1440年頃に書かれたProtorium Parvulorum(1−展示番号−)で、『こどもの宝庫』とでも訳せばよいようなものです(1908年印刷本)。次に内容的に古いのは、1530年にロンドンで出版されたもの(これは極めて少数であった)をパリで1852年に再刊したLeclairciment de la langue francoise(2)です。この書の第3部が英仏辞典に相当します(品詞別になっている点で現在の英仏辞典とは異なりますが)。さらに、1547年に出版されたウェールズ語と英語の対訳辞典があります(ファクシミリ版)(3)。これらはイギリスの英語辞典の前奏部に相当する辞書群で本格的な英語辞書史に不可欠な資料ですが、この3辞典をすべて所有している大学図書館は日本には無いでしょう。
 続いて、内容的にも書籍としてもすばらしいのは、1611年刊フロリオ『伊英辞典』(4)です。イギリスの辞書史において「この伊英辞典は多くの点においてはるかに時代に先がけるもの」(ランドウ・小島義郎他訳『辞書学のすべて』)と評価されています。フロリオはモンテ―ニュ『随想録』の英訳で日本にも知られたルネッサンスの文人です。
 学問・宗教の言語であるラテン語と、英語の対訳辞典から、当時の非学問言語である土地ことばイタリア語、フランス語、英語、ウェールズ語などの対訳辞典への発達し、そのあとで英語を英語で説明する英語辞典が生まれます。最初は難解な語を集めた単語集のようなものが1604年に出来て、そこから今の英語辞典へと発達します。難解語集の流れの中にまだあるのが、英語辞典最初の二つ折り版The New World of  Words(『英語新世界』)(12)です。これにはまだloveもparentも見出し語となっていませんが、18世紀には英語の語彙の記述としての辞書が発達し、カージーが増補改訂した『英語新世界』(1706)(13)ではloveもparentも見出し語となっています(ただしまだ冠詞は見出し語には見出だすことはできません)。ベイリー『ユニバーサル語源入り英語辞典』の第2版(14)、第5版(15)もなかなか見る機会のないものですが、『ユニバーサル語源入り英語辞典・第2巻』(16)はこの存在をうまく説明できないというのが通説ですが、どなたかこの「第2巻」と称する版を研究してみてはいかがでしょう。今回戴いたもっともありがたい英語辞典はベイリー『英国辞典』第2版(17)です。この辞書に白紙を挟み、そこに書き込みをして、さらに多くの文学作品から引用例文を集めて、サミュエル・ジョンソンは英語辞典の金字塔『英語辞典』(1755)を完成させました。マーティンの辞書(21)もジョンソン以前に語義番号を使い、語義の配列を考慮した最初の辞書になります。ダイチとパードンの辞書(20)とともにイギリス辞書史に欠かせないものです。アッシュの辞書(22)は評価は低いのですが、18世紀後半の英語の資料として私はかつてアメリカでの研究中に使いました。このように、18世紀の英語辞典は、現在まで本学が収集してきて不足するものを大きく補うものです。スキナー(7)、ジューニアス(8)の語源辞典を備える大学図書館も日本にはあまり無いでしょう。
 アメリカの辞書では、ノア・ウェブスター『アメリカ英語辞典・第2版』(25)は本学も所有していますが、「ウェブスター大辞典」のほとんどを使用できる鶴見大学図書館において研究者が自由に使えるのが便利と考え、あえて戴きました。
 最後に、木原先生宅に2度にわたり同行された府川修次事務長補佐、エラスムス資料を集められた竹信幾久子書記に感謝いたします。
 なお、今回ご寄贈いただいた書籍は木原文庫となる予定です。


1. The promptorium parvulorum. The first English-Latin dictionary. Edited from the manuscript in the Chapter Library at Winchester, with introduction, notes, and glossaries, by A.L.Mayhew.
 羅英辞典からイギリスの辞書は始まったが、本書が英羅辞典の最初のものである。書かれたのは1440年頃と推定されている。書名は英語に直せば “a storeroom for young scholars”となる。編者はGalfridus説があるが、確証はない。最初に印刷されたのは1499年で、近代では1843年のA.Way版と1908年のA.L. Mayhew版、さらにはR.C. Alstonによるファクシミリ版がある。本書はメイヒューにより編集されたもので、ウエイ版より写本に近く、研究上きわめて貴重なものである。
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2. Lesclarcissement de la langue francoyse par Jean Palsgrave. Publiés pour la première fois en France par F. Génin.
 学問の用語ラテン語ではなく、当時のフランス語、イタリア語、英語の2ヶ国語辞典が作られるようになったのは、16世紀である。英語を含む2ヶ国語の最初のものが、本書1530年の初版である。ジョン・ポールズグレイヴは音韻・シンタックス・語彙を文法とした。第1部がフランス語の発音、第2部がフランス語文法、第3部が英語の単語に相当するフランス語を与える。語は名詞・形容詞のように分類されている。発音、文法ともに優れたものとされているが、語彙の部分もコトグレイヴ((9)の初版)に先立つものとして評価は高い。
 ポールズグレイヴは、ロンドンに生まれ、ケンブリッジ卒業後、パリに留学する。ヘンリー8世の妹メアリーがフランス王ルイ12世と結婚することとなった時に、彼女のフランス語教師に任命される。結婚一年後にルイ12世が死去すると、イギリスに帰国する。ポールグレイヴは抜群のフランス語力によってイギリスで高く評価されていた。
 展示されているものは、F.Géninの編集により1852年にパリで出版されたものである。初版がごく少数しか印刷されなかったために本書が研究上は使用される。つづり字も初版当時のものである(例えば、Onely the pronowne of the thirds person has dyverse wordes in bothe the nobres …)。

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3. A dictionary in English and Welsh. By William Salesbury. 1547. Facsimile ed.
 ウィリアム・セイルズベリー(1520頃―84頃)の、ウェールズ語に当たる英語を与えた辞書で、1547年に出版されたもののファクシミリ版である。英語を学ぶウェールズ人のために書かれた。ウェールズ語―英語辞典では最初のものであるだけではなく、2ヶ国語辞典の初期のものの一つで、代表的なものである(ウェールズ語はケルト語派の一つで、英語はゲルマン語派に属する)。見出し語は7千以上とされるが、すべての見出し語に英語が与えられているわけではない。本書は16世紀のウェールズ語と英語の重要な資料となっている。
 セイルズベリーはウェールズに生まれ生涯の大部分をウェールズで過ごすが、オックスフォード大学でヘブライ語、ギリシャ語、ラテン語を学ぶ。新約聖書もウェールズ語に共訳している、ルネッサンス期のウェールズを代表する学者である。
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4. Qveen Anna's new world of words, or dictionarie of the Italian and English tongues, collected, and newly much augmented by John Florio.  London: Printed by Melch, Breadwood, 1611.
 ジョン・フロリオ(1553−1625)の編集した伊英辞典。初版(見出し語約4万6千語)が1598年、本書はフロリオ自身による第2版で、見出し語は約7万4千語とされる。広範囲な語彙の収集で知られる。前付けにこの辞書のために読んだ書物の一覧が3頁にわたってある(実際には先行のイタリア語辞典を参照しているとされる)。伊英辞典としては最初のものではないが、内容的に辞書編纂史に残る優れた辞書とされている。
 フロリオは、イタリア人を父としてロンドンに生まれる。イタリア人文主義の伝統を身につけた、イギリス・ルネッサンスを代表する人物で、エリザベス女王のイタリア語教師も務めた。

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5. Piazza universale di proverbi Italiani: or, a common place of Italian proverbs and proverbial phrases … Composed by Gio Torriano. Printed by F. and T.W. for the Author, 1666.
 ジョヴァンニ・トリアーノは、1642年に約650イタリアの諺を集めて、Select Italian Proverbsをロンドンで出版する。その後、さらにトリアーノはPiazza universale di proverbi italianiをロンドンで出版する。それが本書で、諺・諺的表現1万を含むとされる。「一国民の言語と特質は、諺と諺的表現に閉じ込められている」との観点からイタリア語を読む人と、話す人を対象に編集している。左欄にイタリア語、右欄にそれにあたる英語を載せる。例えば、Amor di donna è come la castagna, bella di fuori di dentro la magagna.と左欄にあり、右欄にThe love of a woman is like a Chestnut, fair without, and maggot-eaten within.とあるような書き方である。
 トリアーノは、フロリオの伊英辞典の第3版の改訂を担当したイタリア語教師である。

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6. Adagia, id est; proverbiorum, paroemiarum et parabolarum omnium, quae apud Graecos, Latinos, Hebraeos, Arabes, & c. 1670.
 オランダ出身の人文学者エラスムス(1466?―1536)が1500年に出版した『格言集』は、広い学識を生かしたギリシャ・ローマの格言3000を集めて注釈を加えたもので、これによってエラスムスの名は広く知られることになった。『格言集』は、当時の学問用語であるラテン語で書かれているため、さまざまな版がいろいろな所で出版された。本書は、数人により追加されたものをドイツ人Johan Jakob Grynaeusが編集したもので、ギリシャ語、ラテン語だけではなくヘブライ語、アラビア語を含み、その数約4000とされる。
 エラスムス『格言集』は、イギリスにおける諺研究の出発点となった。そして、18世紀中頃においても、ベンジャミン・マーティンは、諺はエラスムスかレイ(Ray)を見ればよい、と『改正英語―新ユニバーサル英語辞典』(1749)で述べている(その第2版(21)が今回の展示物の一つである)。

                        


 7. Etymologicon linguae Anglicanae, seu explicatio vocum anglicarum etymologica ex propriis fontibus, scil. Ex linguis duodecim. 1671.
 スティーヴン・スキナー(1623−1667)によってラテン語で書かれた英語語源辞典。本書は、18世紀末まで英語の語源辞典ではもっとも優れているものとされ、英語辞典史上に燦然と輝くサミュエル・ジョンソン『英語辞典』にも影響を与えた。アメリカの辞書編集者ノア・ウェブスターはスキナーを痛烈に批判した。しかし、語源辞典の歴史上欠かせない一書である。スキナーは、オックスフォード大学卒業後、ハイデルベルクで医学を学んだ。
                        


8. Etymologicum Anglicanum ex autographo descripsit & accessionibus permultis auctum edidit Edwardus Lye … 1743.
 ラテン語名Fransisus Junius、ドイツ語名Franziskus Junius(1623−1667)による英語語源辞典で,ラテン語で書かれている。原稿をライ(Edward Lye)が編集して出版した。ジュ―ニアスは、ハイデルベルク(ドイツ)に生まれたゲルマン語学者で、ウィンザーで死去。

                          


9. A French-English dictionary, composed by Mr Randle Cotgrave: with another in English and French. Whereunto are added sundry animadversions, with supplements of many hundreds of words never before printed; ... this works is exposed to publick, by James Howell. 1673.
 コトグレイヴ(1634年没)の仏英辞典A Dictionarie of the French and English Tongvesは1611年に出版される。1632年の第2版にはロバート・シャーウッドにより英仏辞典が加わる。1650年、1673年と版を重ね、本書1673年版A French and English Dictionary はジェームズ・ハウェルにより改訂・増補される。仏英が全体の3分の1以上を占め、そのあとに英仏が来る(ノンブルは無い)。

                          


10. Phraseologia generalis; ... a full, large, and general phrase book. By William Robertson. 1681.
 英語にあたるラテン語を、さまざまな本から集めた表現集で、学生のために編集された。例えば、manのいくつかの語義にそれにあたるラテン語を提示する。句もとりあげ、A young man; juvenis  An old man; senex のように記述する。さらに、文にも及び、A good man is constant; Nihil in viro bono levitates est, aut inconstantiae, nihil inane, varium, mutabile, inconstans, &c.のようになる。当時イギリスの学校では、ラテン語の学習が中心であった。grammar schoolの名称にその名残りを見ることができる。
 わかりやすく譬えれば、英語を学ぶ日本人にとっての和英大辞典というところである。

                          


11. Le dictionnaire de l'Academie francoise, dedie au roy. 2 vols.
 フランス・アカデミーが編纂し1694年に出版されたフランス語辞典のファクシミリ版である。イタリアに続いてフランスでもアカデミー編の辞書が出版されたことにより、イギリス人は英語辞典の後進性をいやがうえにも痛感することとなる。のちに『ロビンソン・クルーソーの冒険』を書くことになるダニエル・デフォーは早くも1698年にフランス・アカデミーの業績を讃えている。
 辞書そのものは、規範的で欠点も目立つとされるが、ヨーロッパの辞書編纂に与えた影響はきわめて大きい。 
   
12. The new world of words: or a general English dictionary. Collected and published by E.P. [Edward Phillips].  4th ed.  Printed by W. R. for Obadiav Blagrave ..., 1678.
 エドワード・フィリップス(1630−96)の『英語新世界』は、英語辞典で最初に二つ折り本という大型の版型を使ったものとなる。固有名詞を含む見出し語は約1万1千語である。
 フィリップスは各分野の専門家の協力を得て編集したとする。どの程度「専門家」が関与したか疑問とされているが、19世紀後半から行われるアメリカの編集方針と通じるところがある。
 立派な外見にもかかわらず先行のブラント『グロッソグラフィア』(Blount, Glossographia, 1656)を大幅に採り入れたもので、ブラントは剽窃と強く批判した。
 初版は1658年で、本書はその4版である。2種類の付録がつく点で第2版(1662)、第3版(1671)とは異なる。第5版(1696)で見出し語は約1万7千となるが、フィリップスがこの改訂に関わっているかは疑問視されている(Starnes & Noyes 1991)。
 ジョン・ミルトンの甥に当たるフィリップスにはいくつかの著述があり、その一つTheatgrion poetarum (1675)はイギリス詩人伝記辞典の最初の試みの一つとされている。
 
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13. The new world of words: or, universal English dictionary, compiled by Edward Phillips. 6th ed., revised, corrected, and improved... by J.K. [John Kersey]. 1706.
 エドワード・フィリップス(1630−96)のThe New World of Wordsの第5版の再版は1700年に出版された。それをジョン・カージーが増補改訂して1706年に出版したのが本書である。見出し語は3万8千語と推定されている(Starnes & Noyes 1991)。
 内容的には、古典・中世の伝説類を大幅に省き、ジョン・ハリスの科学・技術辞典(1702)から採り入れた科学用語を特色の一つとする。また、「いなかことば」を見出し語とすることも強調されている。フィリップスの定義を改めた点でもカージーは評価されている。
                          


14. An universal etymological English dictionary: comprehending the derivations of the generality of words in the English tongue ... By N. Bailey. Printed for E. Bell [et al]. 2nd ed., 1724.
 英語の辞書編纂史上重要なネイサン・ベイリー『ユニバーサル語源入り英語辞典』の初版は、1721年に出版された。廃語のうち、エドマンド・スペンサーの用いた表現を含む。本書はその第2版で、ジェフリー・チョーサーの表現が入る。
                          


 15. An universal etymological English dictionary. By N. Bailey. 5th ed. 1731.
 ネイサン・ベイリーの『ユニバーサル語源入り英語辞典』は、1726年に第3版、1728年に第4版を出版し、本書は第5版である。第3版でシェイクスピアの用いた表現が入ったが、第5版では見出し語にアクセント記号が加えられている点に注目したい。
                          


 16. The universal etymological English dictionary by N. Bailey. Vol.2, 2nd ed. London: Thomas Cox, 1731.
 ネイサン・ベイリーの『ユニバーサル語源入り英語辞典』の第2巻を謳っているが、普通の意味での第2巻ではない。これが第2巻とすると、「第1巻」との重複を説明できない。おそらくは、ベイリーの次の辞書(『英国辞典』)の準備のために出版されたのではないかと推測されている(両方ともコックス社からの出版である)。初版は1727年で、本書はその第2版である。
                          


 17. Dictionarium britannicum: or a more compleat universal etymological English dictionary than any extant. 2nd ed. By N. Bailey. London: T.Cox, 1736.
 ネイサン・ベイリーの『英国辞典』は、サミュエル・ジョンソン『英語辞典』(1755)以前でもっとも優れた英語辞典とされる。本書は、その『英国辞典』の第2版で辞書編修史で有名であるのは、サミュエル・ジョンソンが『英語辞典』を編集する際に、本書に白紙を入れ、それに書き込みをしたことによる。ジョンソンは独自の定義をする一方で、本書の定義も借りている。
                           


 18. A compleat English dicionary, oder vollstandiges English-Deutsches Wörter-Buch. Nathan Bailey. 1752.
 ネイサン・ベイリーの辞書を基にした『英独辞典』を謳っているが、英語の見出し語にフランス語、ラテン語、ドイツ語を与える多言語辞典である。
 ベイリーの辞書家としての名声はドイツにも伝わっていたと思える。

                          


 19. An English dictionary: explaining the difficult terms ...: together with the etymological derivation of them from their proper fountains ... By E. Coles. Newly corrected and improved ed. 1732.
 エライシャ・コールズ『英語辞典』は初版が1676年に出版され、約50年にわたって印刷される。収録語数は、小型の辞書にもかかわらず約2万5千語に及ぶ。コールズの辞書の新しさは、難解語の系統に属しながらも、特殊辞典ではなく一般読者用として初めて方言と隠語を見出し語としていることにある。
 固有名詞以外の語では、フィリップス『英語新世界』からの借用が多い。
 コールズは、ロンドンでラテン語と英語の教師であったが、最後はアイルランドのゴールウエイで教え、そこで死去した。ラテン語辞典も編集。
                          


 20. A new general English dictionary; peculiarly calculated for the use and improvement of such as are unacquainted with the learned languages. 5th ed. 1748.
 ダイチとパードンによる『新一般英語辞典』(初版1735年;本書は第5版)は、外国語を知らない人と生徒を対象としている。したがって、語源は記述していない。ベイリーに続いて、見出し語にアクセント符号を付け、タイトル・ページでその点を強調している。
 また、「簡約英語文法」(A Compendious English Grammar)が前付けにある点にも注目したい。 

                          


 21. Lingua Britannica reformata: or, a new universal English dictionary. By Benjamin Martin. 2nd ed., greatly improved and augmented. 1754.
 本書は、ベンジャミン・マーティン(1705−1782)の『改正英語―新ユニバーサル英語辞典』(初版1749年)の第2版で、編者自身の増補版である。
 マーティンの辞書は、前付けに編集方針を掲げた最初の英語辞典である。また、語義を語義番号(1,2,3,4など)で区分した最初の英語辞典でもある。マーティン自身はこれがこの辞書を企てた最大の動機であると述べて、語義分類の基準も述べている(しかしながら、この「語源、原義」を語義の1とする方針はすでに1747年にサミュエル・ジョンソンが『辞書計画書』において発表していて、マーティンはそれを利用したものとされている)。そして、ジョンソン『英語辞典』が1755年に出版されると、本書は消えることになる。しかしながら、イギリスの辞書編纂史では欠かすこのできないものとなっている。

                          


 22. The new and complete dictionary of the English language. 2 vols. 1775.
 文法書(Grammatical Institutes)でも知られるジョン・アッシュ(1724−1779)のこの辞書は、広範囲な語彙を収録していることに特徴がある。
 curmudgeionの語源の間違いで知られる。

                          


 23. A popular and complete English dictionary. By John Boag. 2 vols. 1850.
 スコットランド生まれで、グラスゴー大学を卒業した牧師ジョン・ボゥグ(1775−1813)が、ノア・ウェブスターの辞書を基に編集する。動物学、植物学、文学、芸術に関する語数千を加えたと序文に述べている。前付けに文法解説がある。この辞書はかなり売れたが、スコットランド出身のオゥグルヴィ『インピリアル辞典』(これもノア・ウェブスターの辞書を基にしている)に取って代わられた。

                          


 24. A dictionary of the English language: ... to which are prefixed an introductory dissertation on the origin, history, and connection of the languages of Western Asia and of Europe; and a concise grammar, philosophical and practical, of the English language. By Noah Webster. Reprinted by E.H.Barker. 2 vols. 1832.
 ノア・ウェブスターにとってサミュエル・ジョンソンの『英語辞典』を超える最高の英語辞典を編集することが野望であった。予告から30年近くかかってその夢を実現したのがAn American Dictionary of the English Language (1828)である。その『アメリカ英語辞典』のアメリカを書名から省いてイギリスで出版したのが、このA Dictionary of the English Language(『英語辞典』)である。アメリカでは初版2000部が増刷されることはなかったが、イギリスでは初版2500部に加えての増刷版が本書である。
 本学には、『アメリカ英語辞典』の初版、ファクシミリ版2種があるが、ここにイギリス版を加えることができたことは、英米を合わせて英語辞書史を見る立場には本書も有益な一書である。

                          


 25. An American dictionary of the English language: first edition in octavo, containing the whole vocabulary of the quarto, with corrections, improvements and several thousand additional words: to which is prefixed an introductory dissertation on the origin, history and connection of the languages of Westeran Asia and Europe, with an explanation of the principles on which languages are formed. 2 vols. 1841.
 ノア・ウェブスター『アメリカ英語辞典』の第2版で、ウェブスター自身の改訂になる。見出し語を分節し、辞書本体にも多少の見出し語の追加がある。それに20頁の補遺が巻末に付く。詳しくは拙著『辞書とアメリカ―英語辞典の200年』の第2部第1章を参照されたい。 

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26. New illustrated edition of Dr. Webster's unabridged dictionary of all the words in the English language: containing 10,000 more words than any other dictionary, including all scientific and technical terms ... Throughly revised and improved by Chauncey A. Goodrich and Noah Porter. London: George Bell & Sons.
 1861年改訂の『アメリカ英語辞典』のイギリス版で、出版年が記載されていない。挿絵入りであるところから1861年改訂版(ウェブスター・マーン版)のリプリントと考えられる。これと同じものがいつくかの図書館にある。

                          


27. An American dictionary of the English language, by Noah Webster. Thoroughly revised, and greatly enlarged and improved, by Chauncey A. Goodrich and Noah Porter. To which is added a supplement of nearly five thousand new words, with their definitions, etc. 1882.
 ノア・ウェブスター直系の『アメリカ英語辞典』のチョーンスィ・グッドリッチとノア・ポーターによる1861年改訂版の1882年版である。1861年版との違いは、巻末に54頁にわたる補遺である。
 1861年の大改訂で『アメリカ英語辞典』の最大の欠陥であるノア・ウェブスターの語源が全面的に書き変えられた。また、辞書本体に挿絵が入って、アメリカの辞書の型ができあがる。

                          


28. Webster's international dictionary of the English language: being the authentic edition of Webster's unabridged dictionary, comprising the issues of 1864, 1879, and 1884. Now thoroughly rev. and enl. under the supervision of Noah Porter. 2 vols. 1891.
 ノア・ウェブスター直系の「大辞典」は、1890年の改訂で『ウェブスター国際英語辞典』と書名を変える。その1891年刷りである。「ウェブスター大辞典」は英米だけではなく、広く英語圏で使われるようになったことが書名に反映した。編集の理念は、国際的な英語辞典であるが、内容的には『アメリカ英語辞典』の改訂の一つである。1冊本もある。
 本学の図書館は『ウェブスター国際英語辞典』を欠いていた。全国的にも本辞典を所有する図書館はあまり多いとは言えない。
 「ウェブスター大辞典」で本学が所有していないのは、グッドリッチ改訂『アメリカ英語辞典』(1847)のみとなった。
                          


29. Dictionary of Americanisms: a glossary of words and phrases usually regarded as peculiar to the United States. By John Russell Bartlett. 4th ed. 1877.
 19世紀のアメリカニズム集として傑出しているジョン・バートレット『アメリカニズム辞典』の第4版。第2版は、『オックスフォード英語辞典』(OED)にも引用されている。本学図書館は初版(1848年出版)を所有している。

                          


30. Webster's collegiate dictionary. 3rd ed. G.&C.Merriam. 1926.
 『ウェブスター大学辞典』の第3版である。第3版の初刷りは1917年で、『ウェブスター新国際英語辞典』に基づく。大学生用ではあるが、簡略された定義は一般読書人あるいはビジネスマンには大辞典よりもかえって使いやすかったであろうと想像できる。
 『ウェブスター大学辞典』の初版は1898年で、現在も『メリアム・ウェブスター大学辞典』(第11版;2003)として出版されている。
                          


31. Webster's collegiate dictionary. 5th ed. G.&C.Merriam. 1940.
 『ウェブスター大学辞典』の第5版で、最高の1冊本辞典といわれた『ウェブスター新国際英語辞典・第2版』に基づく。第5版の初刷りは1836年で、基本語にも力を入れだした版である。

                          


32. Webster's new collegiate dictionary. G.&C.Merriam. 1951.
 本書『ウェブスター新大学辞典』も『ウェブスター新国際英語辞典・第2版』に基づくもので、第5版に見出し語を追加し、定義・類義語解説を多少変えている。『ウェブスター大学辞典』の第6版である。

                          


33. The Pocket Oxford dictionary of current English. Compiled by F. G. Fowler & H. W. Fowler. New and enlarged American ed. Revised by Geroge van Santvoord. 1935.
 ファウラー兄弟編集の『ポケット・オックスフォード英語辞典』をアメリカ版としてザントヴォ−トが増補したものが、1927年にニューヨークのオックスフォード大学出版局から出る。同書はアメリカで用いられている語や語義を補足した。本書は、そのアメリカ版にル・メジューラによる補遺を付したもので、例えばbalalaika, by-pass, chain store, chewing-gumなどが新たに加わっている。
 PODそのものは、小型辞典の傑作であって、ほぼファウラー当時のままである4版まではこれに代わる小型辞典もなく、PODには独特の存在感がある。アメリカ版は所有者も少なく、本学にとって貴重なものである。

                          


34. A complete collection of Scottish proverbs explained and made intelligible to the English reader. By James Kelly. 1721.
 ジェームズ・ケリーが126のスコットランドの諺を集め、イングランドの読者にわかるように説明した諺集である。1670年刊のジョン・レイ(John Ray)のCollection of English Proverbsを範とする。

                          


35. A provincial glossary; with a collection of local proverbs, and popular superstitions. By Francis Grose. A new edition, corrected. 1811.
 フランシス・グロース(1731−91)による英語の方言集で、レイ(J. Ray)の方言集(1674年;増補版1691年)に続く。本書には諺と迷信も含まれている。
 グロースは、イングランド、ウェールズ、スコットランドのほとんどすべての地方を訪れており、アイルランドへも足を伸ばしたが、卒中で急死した。
                          


36. A dictionary of archaic and provincial words, obsolete phrases, proverbs, and ancient customs, from the fourteenth century. By James Orchard Halliwell. 2 vols. 1847.
 ケンブリッジ大学卒のシェイクスピア学者ハリウェル(1820−1880)による古語・方言辞典。ハリウェルの広い学識を示すものとして知られた。
 今回展示しているコールリッジの辞書(37)の参考文献ともなっている。

                          


37. A dictionary of the first, or oldest words in the English language: from the semi-Saxon period of A.D. 1250 to 1300. Consisting of an alphabetical inventory of every word found in the printed English literature of the 13th century. By Herbert Coleridge. 1862.
 ハーバート・コールリッジの『英語の最初あるいは最も古い語の辞典』は、イギリス言語学会で討議・検討されていた英語辞典(A New English Dictionary; のちにOxford English Dictionaryと改名される)の礎として編集・出版されたものである。1250年から1300年までに印刷された語のすべてを対象としている。
 コールリッジは弁護士であったが、トレンチ『我々の英語辞典のいくつかに欠陥について』に刺激され、語学者となる。イギリス言語学会がジョンソンとリチャードソンンの辞書の補遺を作る企画を立てたときにその仕事に任命される。その成果の一つが本書である。

                          


38. A supplementary English glossary. By T.Lewis O.Davies. 1881.
 ハリウェルの古語・方言辞典を補うために編集されたが、Charles Richardson, A New Dictionary of the English Language (1836-37)、レイサム増補「ジョンソン辞典」(ともに本学図書館にあり)、T.ライト増補によるネアーズの辞書を補足するものとなった。16世紀以後の古語や当時の辞書に未集録の語を集める。引用例文を挙げる点で優れている。

                          


39. Dictionary of obsolete and provincial English, containing words from the English writers previous to the nineteenth century which are no longer in use, or are not used in the same sense, and words which are now used only in the provincial dialects. Compiled by Thomas Wright. 2 vols. 1893.
 トマス・ライト(1810−77)による廃語・方言辞典で、18世紀まで使われていて、19世紀には使われなくなった語・意味、方言にだけ残る語を集めている。
 ライトは歴史学の大家とされたが、文学に関わるものもマロリーから編集した『アーサー王と円卓の騎士』(1858)などがある。
                          


40. A glossary of words phrases names and allusions: in the works of English authors particularly of Shakespeare and his contemporaries. By Robert Nares. New ed. with considerable additions both of words and examples by J.O. Halliwell and Thomas Wright. 1905.
 ロバート・ネアーズ(1753−1829)の初版(1822)をハリウエルとトマス・ライトが増補した新版である。ネアーズの初版はエリザベス朝に限られ、またシェイクスピアの諸版の注釈を主たる資料とした。
 ネアーズは、オックスフォード大学卒の牧師であったが、1795年から1807年まで大英博物館でassistant librarianを務める。

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41. An universal military dictionary, a copious explanation of the technical terms &c. used in the equipment, machinery, movements, and military operations of an army. 1779. Facsimile ed. 1969.
 軍事に関する語の辞書で、専門語辞典、特殊辞典に入る。1779年に出版されたもののファクシミリ版で、オタワで1969年に700部限定で出版されたものである。fortなどはもちろんeducation, mathematicsなども見出し語とする。後者に属するものは、例えばDEVASTATION, in military history, the act of destroying, laying waste, demolishing or unpeopling towns, etc.のようになる。
 図解、図表、数式が入る。
 OEDの資料の一つとなっている。
                          


42. A general pronouncing and explanatory dictionary of the English language. Sheridan improved. By Stephen Jones. 1820.
 スチーヴン・ジョーンズの ”Sheridan Improved”として知られる本辞典は、英語辞典史上に残る発音辞典Thomas Sheridan, A General Dictionary of the English Dictionary (1780)をジョーンズが改訂したもので、初版がロンドンで1791年に出版される。本書は1820年版である。見出し語につづいて、綴り直し発音、品詞が記述され、行を改めて簡単な定義が与えられている。
 『シェリダン改良版』(初版)は1801年にアメリカのウィルミントンで、1806年にフィラデルフィアで翻刻されている。

                     


43. A critical pronouncing dictionary, and expositor of the English language ...: to which are prefixed, principles of English pronunciation ...: likewise, rules to be observed by the natives of Scotland, Ireland, and London, for avoiding their respective peculiarities. 1822.
 大型の発音辞典ではトマス・シェリダンに続く、ジョン・ウォーカーの発音辞典の1822年版である。初版は1791年で、出版と同時に大変な評判となり、以後19世紀の中頃まで発音に関してはもっとも権威のあるものとされ、他の辞書にも採用され、学校でも基準となった。ノア・ウェブスター死後のアメリカでも同様であった。
 国際音標文字は1888年に国際音声学協会によって制定されたものである。ウォーカーはシェリダン同様に母音の上に数字を乗せ、解説でその数字によって表される発音を明らかにする方法を採っている。
  ウォーカー(1732−1807)は、ロンドンの近くで生まれる。俳優となり、18世紀イギリスの名優デイヴィッド・ギャリックの下で演技をしたこともある(ギャリックは、サミュエル・ジョンソンがオックスフォードを中退して故郷で学校を開いたときの3人の生徒の一人で、ジョンソンと共にロンドンに出た)。弁論術の講演をして生活をしていた時期もある。 
                          


44. An English pronouncing dictionary (on strictly phonetic principles). By Daniel Jones. 1917.
 「[An English Pronouncing Dictionary ]は著者の熟知してゐる南部英語のpublic school pronunciationを約五萬語について國際音聲字母(International Phonetic Alphabet)で記したもの。事實の純客観的記載を目的とし、上記發音を推奨したものではない。」(『研究社英語學辤典』1940年刊)。

                          


45. An English pronouncing dictionary (showing the pronunciation of over 50,000 words in international phonetic transcription). By Daniel Jones. rev. ed., with supplement. 1924.
 ジョーンズの『英語発音辞典』の改訂版(第2版)である。

                          


46. An English pronouncing dictionary (showing the pronunciation of over 54,000 words in international phonetic transcription). By Daniel Jones. 4th ed., rev. and enl. 1937.
 ジョーンズの『英語発音辞典』の第4版で、5万4千語以上のreceived pronunciation(容認発音)を記述する。received pronunciation自体が1920年代にジョーンズが使い始め、今では英語圏に定着した用語である。ジョーンズは20世紀前半のイギリスの指導的音声学者であっただけでなく、『英語発音辞典』はELTの本としてはもっとも影響力のあるものであった。
 現在でも後継者により改訂版(第15版)が出版されている。

                          


47. A new dictionary English and Dutch, wherein the words are rightly interpreted, and their various significations exactly noted. 2 vols. 1691.
 第1巻が英蘭、第2巻が蘭英辞典である。英語とオランダ語は同族語であり、距離的にも近く、通商その他で実用的な辞書が必要とされた。上記の辞書とは性格を異にするが、語・句・文を記述する点では同じである。例えば、makeではto Make, Maaken, doen.  to Make a Law, een Wet maaken.  What makes him stubborn? Wat is de redden dat hy zo halfterrig is? のようになる。
 Sewelは、15歳の時に10ヶ月間イングランドに滞在したことがある。英語からオランダ語への翻訳者として活躍し、当時のもっとも優れたイギリスの作家に使われている語句を辞書に組み入れた、と述べている(Osselton 1995)。
                          

48. A universal English-German and German-English dictionary. By Felix Flügel. Two parts in three volumes. 1891.
 ドイツ人フェリックス・フリューゲルの編纂した英独辞典(全2巻、辞書本体1816頁)と独英辞典(辞書本体923頁)である。本書は、第4版第2刷り。トッドにより増補されたジョンソン『英語辞典』(「トッド版ジョンソン」)に依存するところが多いと言われる。
 短い時間で調べたところでも、19世紀のイギリスの作家シャーロット・ブロンテ、サッカレー、ディケンズなどに加えて、アメリカのマーク・トウェイン、ハリエット・ビーチャー・ストウなどが引用されていて、なかなかの辞書のようである。
                          


49. The Nuttall encyclopaedia: being a concise and comprehensive dictionary of general knowledge, edited by James Wood. 1905.
 700頁に1万600の小項目を簡潔に説明した百科事典である。

                          


50. English-language dictionaries, 1604-1900: the catalog of the Warren N. and Suzanne B. Cordell collection. Cataloged and compiled by Robert Keating O'Neill; foreword by Suzanne B. Cordell. 1988.
 本書は英語辞典の参考図書として有益である。1604年は最初の英語辞典とされるコードリー編A Table Alphabeticallが出版された年である。 
                          

51.
                          

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